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対談【トヨタ自動車×日立ソリューションズ】OSSの活用で新たなイノベーションを 対談【トヨタ自動車×日立ソリューションズ】OSSの活用で新たなイノベーションを

対談【トヨタ自動車×日立ソリューションズ】OSSの活用で新たなイノベーションを

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誰でも無償で使えて、IT業界のみならず広く社会に活用されている「オープンソースソフトウェア(以下、OSS)」。便利かつ効率的な仕組みでDX(デジタルトランスフォーメーション)にも必要不可欠である一方、知的財産権やセキュリティなどのリスクを正しく理解しておく必要がある。
今回はOSSに関して世界でも先進的な取り組みを行っているトヨタ自動車の遠藤氏と田中氏、日立ソリューションズでOSSを扱う渡邊氏との座談会を実施。OSSが秘めるオープンイノベーションの可能性や、未来の社会への想いを語ってもらった。

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遠藤 雅人 / Endo Masato
トヨタ自動車 先進技術カンパニー プロジェクト領域 AD-V:バリューチェーンサービス・技術開発 ドライバー状態把握グループ グループ長

入社後から知財戦略の策定含め幅広く知財業務に従事し、 社内外・国内外でOSSの啓発活動を多数実施。現在は新車の販売以降のバリューチェーンビジネスにおける新サービスの企画・開発のマネージャーなどを担当。


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田中 美有 / Tanaka Miyu
トヨタ自動車 知的財産部 知財企画室 企画推進グループ

入社後、知的財産部にて特許の管理業務や模倣品対策などを担当。現在はOSSコンプライアンス遵守体制の構築に取り組み、世界初となるISO/IEC 5230取得に貢献。Open Source Summit Japan2020に登壇するなど、社外の講演も多数。



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渡邊 歩 / Watanabe Ayumi
日立ソリューションズ ITプラットフォーム事業部 デジタルシフト開発支援本部 プロセス改善ソリューション部 OSS管理ソリューショングループ グループマネージャー OSS管理コンサルタント

日立ソリューションズ入社後、プログラム品質向上を目的とした検証サービスに従事。2011年よりオープンソース管理ソリューションを立ち上げ、企業のOSS利活用を支援するコンサルティングを提供。お客様企業向けのコンサルティングの他、セミナー講演や技術文書の投稿などを行っている。



OSSが持つ独自のフィロソフィーや価値観

まずはOSSの目的や価値などを教えてください。
渡邊:OSSとは、端的にお答えすると、「世界中のエンジニアが協力してつくりあげているソフトウェア」というイメージでしょうか。企業がOSSを活用する一番のメリットは、開発量を抑えられることです。安定性や汎用性があるので効率良く開発でき、開発期間の短縮や品質向上につながります。

遠藤:OSS関連の動きは1990年代に活発化していき、2000年前後から企業での活用が加速し、この10年でますます重要視されるようになってきました。

渡邊:OSSを活用したさまざまな製品やサービスが生まれていますし、IT業界に限らず、もはやOSSありきの開発スタイルが一般的といえるかもしれませんね。

遠藤シノプシス社の最新のレポートによれば、対象のプロジェクトの98%がOSSを利用しており、全ソースコードに占めるOSSの割合が75%以上になっており、OSSはソフトウェア開発で欠かせないものになっているといえます。自動車業界もOEMの垣根を超えたプラットフォームが登場してきたり、車に搭載されるECU(Electronic Control Unit)に複雑なプログラムが組み込まれるようになってきたり、共通の規格をベースに開発する方が効率的だと考えられるようになっています。トヨタとしても、OSSの技術や理解を深めていき、意義のある取り組みを積極的に行ってきました。


OSSの活用におけるデメリットや注意点はどんなところでしょうか。
渡邊:まず考えられるのはリスクです。大きく分けて2つのリスクがあります。ライセンスに関する「コンプライアンスリスク」と、OSSの脆弱性を突いたサイバー攻撃などに関する「セキュリティリスク」です。それらに対応するために、SBOM(Software Bill of Materials)と呼ばれる、製品やサービスに使用されているOSSのリストを作成し、ライセンスや脆弱性情報を正確に把握してリスク軽減に努めていますね。

田中:自動車業界はサプライチェーンがグローバルかつ大規模なので、OSSの管理を広範囲にきめ細かく行わなくてはなりません。OpenChain※1の認証取得や業務プロセスの設計といった社内のルール整備のほか、国際標準として定められた部品票(SPDX Lite)※2を活用するなど、組織間の情報共有をスムーズにしたいと考えています。

遠藤:渡邊さんがおっしゃった2つのリスクに加えて、トヨタが意識しているのは「レピュテーションリスク」です。OSSは「何でも自由に使って良い」と思われがちですが、条件を守った上で無料利用できるという大前提があるので、そのルールを一つひとつ紐解き、適切に使用していくモラルやマナーも大切だと考えています。

※1:The Linux Foundation傘下のプロジェクトの一つで、米国のGoogleやマイクロソフトなど、多くの先進企業が参画する、ソフトウェアのサプライチェーンにおけるOSSコンプライアンスの向上を目的として活動しているコミュニティ。
※2:OpenChain JapanWGにて定義された、OSSの情報交換用のフォーマット。



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OSSに関する世界的な動きと各社の取り組み

OSSに関する日立ソリューションズの取り組みを教えてください。
渡邊 :私たちは2020年、日本企業で初となるOpenChainの公式パートナー認定を取得しました。OpenChainが提唱する世界標準のOSS管理手法などを日本企業にも広く知ってもらいたいと思い、イベントやセミナーなどを通じた情報発信も行っています。また、OSSライセンスの解釈を支援する「OSS License Simple Viewer」というツールをトヨタ自動車さまと日立製作所、当社の共同で開発しました。OSSはもともと私たちが大切にしている「協創」という考え方に合っていると感じています。それから、日立グループの理念として掲げている「基本と正道」にもあるように、損得よりも善悪というか、周りの方を尊重した行動をしようといったところもOSSと親和性があると思っています。

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同じく、トヨタの取り組みについてはいかがでしょうか。

田中:まずはISOの取得ですね。先ほど申し上げた、サプライチェーン各社のOSSを管理するための適切なプロセスとして、標準化・均質化を図る仕組みづくりを進めてきました。また、Open Source Summit Japanなどのイベントに参加して知見を共有することで、サプライチェーン全体のレベルを向上していけたらと思っています。特許権侵害のリスクについても、Open Invention Networkのボードメンバーとして先進企業の皆さんと協力しながらリスク削減に取り組んでいますね。

遠藤:それらのコミュニティと協同した取り組みは、トヨタの理念でもある「現地現物」と「手の内化」の思想と通じるものがあると考えています。なるべく自ら現場に行き、現物に触れて仕事をする「現地現物」。また、自分たちが技術を理解してはじめて活用できるという「手の内化」。OSSの世界とトヨタの考え方がすごくフィットしているので、これからも大事にしていきたいですね。 OSSはコミュニティによって開発されるものですから、リスクの削減についてもコミュニティとともに推進していければと考えています。

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将来にかける想いやビジョン

今後、OSSに関してどのような取り組みを考えていますか。
田中:私の課題としては、OSS管理の仕組みを社内外に定着させ、OSSを正しく使うという意識レベルを高めていくことですね。これから全社的な取り組みを本格化していき、OSSライセンスのコンプライアンスの意義や重要性を伝えていくべきだと思っています。そして、サプライチェーンの皆さんにも、より適切にOSSを使っていただけるよう管理体制の強化のサポートをしていければと考えています。

遠藤:私も引き続きコミュニティへの貢献を加速させて、OSSのリスク削減やエンジニアが安心してOSSを利活用できる環境の整備に取り組んでいきたいですね。また、自動車業界においてはOSSを車で利用する場合の機能安全や長期サポートに関する課題に取り組んでいくことも重要だと考えています。

渡邊:私は、遠藤さんたちと取り組んでいる「OSSコンプライアンス業務 スキル標準フレームワーク」を完成させて、多くの企業で活用していただきたいと思っています。また、OpenChain Japanが盛り上がっているので、OSSの分野で日本が世界をリードしていけるように、トヨタ自動車さまをはじめ日本の企業同士が切磋琢磨していけると良いですよね。


OSSの取り組みを通じた、将来のビジョンを教えてください。
遠藤:OSSを活用して、品質とスピードを両立した技術開発を進めていき、トヨタがめざす「より良いモビリティ社会の実現」や「幸せの量産」を形にしていきたいと考えています。また、個人的にOSSは自由な世界だと感じています。会社や業界、そして国の枠を超えて、自発的に同じ話題について語り合えるという不思議な感覚がおもしろくて、これも一つのオープンイノベーションだと思っています。ここからおもしろい取り組みが生まれる可能性を日々感じていますし、今まで自分たちを支えてくれた人への恩返しや未来へのステップという意味も込めて、これからも積極的に関わり続けていきたいですね。

渡邊:我々の得意分野を活かしてお客様を支援し、エンドユーザーの皆さんに喜んでもらうこと。日立ソリューションズのビジネススタイルを、このOSSの分野でも実現させていきたいと考えています。また、OSSは互いの成果をリスペクトしてコラボレーションする文化なので、それを浸透させていくことも重要ですよね。OSSをただ活用するだけでなく「貢献」につながっていけるように、私もOSSの普及を通じて社会全体の利益に寄与していけたらなと思っています。

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