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2021.03.02

対談【VISITS×日立ソリューションズ】
ニューノーマルにおけるイノベーション創出への新たな取り組み

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新型コロナウイルスの影響で、社会に大きな変化が訪れた。ニューノーマルにおけるイノベーション創出は試行錯誤の真っ只中で、日立ソリューションズが実施している「ideagramコンテスト」もその一つといえる。今回はideagramの事業開発担当をしているVISITS Technologiesの山中氏と日立ソリューションズの岡山氏、さらにはideagramコンテスト参加経験者である池田氏による鼎談を実施。ニューノーマルにおけるイノベーション創出の可能性について語ってもらった。

  • 山中健太郎 / Yamanaka Kentaro

    VISITS Technologies株式会社 シニア・ディレクター

    新卒でIBMに入社し、戦略コンサルタントとして新規事業の企画・開発、組織改革、経営計画策定を担当。「Best of IBM」を受賞するなど多方面で活躍。2019年にVISITS Technologiesに入社し、ideagramの事業企画・事業開発をリード。

  • 岡山 健一郎 / Okayama Kenichiro

    デジタルソリューション推進センタ 部長代理

    新卒でSEとして入社し、組込み向けソフトウェアの開発に従事。3年目よりマーケティング業務などにも携わるようになり、以後は新規事業企画・開発に携わる。現在はお客様のDX推進を支援する「日立ソリューションズ DXラボ」を担当。

  • 池田 佳奈 / Ikeda Kana

    クロスマーケット・サービス第3部 第3グループ 技師

    2012年の入社以来、企業データの可視化を支援するSEとして勤務。2019年度、データ可視化・営業系のスタートアップの調査・発掘のためシリコンバレーオフィスに駐在。2020年度からはデータ活用とコミュニケーションを軸に新事業を推進中。

ニューノーマルによって生じた課題とは

ー新型コロナウイルスの影響で、働き方やイノベーション創出にどのような変化や課題がありましたか。

山中:コロナ以前のことから話を始めますが、イノベーション創出において以前は、市場動向や自社の強みを捉えた上で事業を起こしていく事前計画的なアプローチが主流でした。しかし近年は、アジャイル開発のように試行錯誤を重ねながら少しずつアップデートを重ねていく創発的な手法が日本でも主流になりつつあります。そのような手法ではメンバー間の気軽で率直なコミュニケーションが重要になります。そんな中で新型コロナウイルスの影響が日本にも及びました。ソーシャルディスタンスを保ちながら、いかに密度の濃いコミュニケーションを取るかという点に課題を感じる企業も多いのではないでしょうか。

岡山:そうですね。リモートワークは、訪問を前提とせず気軽にコミュニケーションできる点はメリットですが、ちょっとした雑談をしにくいので物足りなさを感じることもあります。アイデア創出においては、雑談から思いがけない示唆を得られることも多いですからね。

池田:たしかに、リモートワークが増えて業務に集中できるようになった反面、「ワイガヤ」の機会は減りましたね。しかし、オンラインではさまざまなコミュニティの動きが活発になっていることから、興味や関心が合う人同士のコミュニケーションはむしろ増えたかなという気もしています。

ー上記の変化や課題に対し、どのような取り組みを行ってきましたか。

岡山:新事業創生やDX推進に関心を持つ人同士で、トレンドの情報などを共有しあえる社内のコミュニティを2019年4月に立ち上げました。初めは身近なメンバー数十名程度しかいませんでしたが、コロナ禍で参加者が急増し、今では約400名(※)ほどに増えて、議論やアクションが活発に行われるようになっています。イベントなども充実してきているので、これからも力を入れていきたいですね。

※2021年2月時点

池田:私もコミュニティに参加する側の人間として、そういった場があるのはとてもありがたいと感じています。というのも、イノベーション創出には、チーム内の共通言語や同じ目的意識など、目線合わせが欠かせないと思っていて。気軽に意見交換やコミュニケーションできる場があり、信頼関係やネットワークを構築していける仕組みづくりは重要ですよね。

岡山:池田さんがおっしゃるように、カジュアルなコミュニケーションを通じてイノベーション創出のヒントを生みだしいきたいという思いがあります。というのも、かねてから一部のアイデアマンしか新規事業を生み出せていないという状態に課題を感じていました。事業に対する意見やヒントは、誰もが持っているはず。多くの人からアイデアのタネ・知見・可能性を取り入れてブラッシュアップを図れば、大きな成果に結びつくのではないかなと思っていました。従来は、時間と場所を決めた集合型イベントを行っていたのですが、勤務場所や業務形態の変化などによって、すべての人が気軽に参加できる環境ではなくなってしまったんですよね。その解決策を模索していたところ、社内のネットワークを通じて教えてもらったのが「ideagram」です。

イノベーション創発クラウド「ideagram」の活用について

ー「ideagram」とは、どのようなサービスでしょうか。

山中:ユーザーのニーズとシーズの新たに組み合わせたアイデアを生み出すことや、アイデアを適切に評価するためのクラウドサービスです。つまり「イノベーティブなアイデアを生みだすためのツール」と思っていただければ良いかなと。具体的には、ideagram上でアイデアを出していただき、それを参加者同士が互いに評価をしあい、独自のアルゴリズムでスコアがつきます。そうすることで、質の高いアイデアやその発案者が従来よりも客観的に見つかるようになり、新規事業の創出をサポートできるようになる、という仕組みです。成果として、大手家電メーカー様ではオープンイノベーション案件の発想段階で670もの新規事業アイデアを創出し、ブラッシュアップを経て事業化に向けた検討を進めています。また、ある大手自動車メーカー様ではアイデア発想からPoC開始までのスピードが半年から1カ月まで短縮できました。

ー「ideagramコンテスト」を実施してみて、どのような手応えや魅力を感じましたか。

岡山:まず、参加者の声として多く上がっているのは「楽しい」という感想ですね。アイデアにスコアがつくので、ゲーム感覚で取り組めるのが大きなメリットのようです。また、実際のお客様が抱えている課題に近いテーマを真剣に考えることができるので、前向きに取り組んでくれる人が多いですね。その結果、質の高いアイデアや意見が多く集まり、ideagramの有用性やコンテストの価値が高まっているように考えています。

山中:実際、ゲーム性やエンターテインメント性は狙っていたものではなかったのですが「スコアが出るから燃える」という方は多いですね。スコアを一つの基準として次のアイデア発想につなげたり、コンテストが盛り上がるような仕組みにできると、より良いかなと思っています。

池田:私も実際に参加してみて、ユーザーの視点で出したアイデアが評価されやすい傾向にあったことは大きな発見でした。当事者の視点の重要性を改めて意識するようになったというか、アイデア創出のコツをつかめたような気がして、収穫となっています。また、ほかの人のアイデアや視点を得られて、自分のアイデアが評価されるのもおもしろいですよね。「クラウドで場所や時間を選ばないので気軽に参加できる」といった機能的なメリットも感じました。

イノベーション創出における将来のビジョン

ーideagramを使った今後の展望を教えてください。

岡山:ideagramを使うことで、多くのアイデアを短期間に集めることは容易となりました。しかし、それだけではあくまでも「アイデア」に過ぎません。我々の次の課題は、アイデアを事業に育てていくための仮説構築や、ビジネスとしてのプランニングをしていくこと。いわゆる机上の空論で終わらせないためにも、ユーザの声をきちんと取り込みながらアイデアを事業にしていくためのアプローチがこれからますます重要になってくると思っています。この点についても従来、集合型で行ってきたワークショップをオンライン型に切り替えるなどの取り組みを始めています。

池田:社内のネットワークが広がり、これまで関わりのなかった他部署の方々との交流といった「ななめのつながり」ができたので、今後に活かせると思っています。視点の切り替えといった発想のコツも、新規事業を具現化していくためのヒントにしていきたいですね。

山中:日立ソリューションズさんは、社内のコミュニティの活性化という用途でも、クライアントの課題解決支援という用途でも、ideagramを上手に活用していただいていると感じています。近い将来、ideagramの効果や実践的な成果が形になる日も近いと思うので、とても楽しみです。

ー将来のビジョンや実現したいことは何ですか。

池田:新事業企画に携わる上で、まずはアイデアを事業化することですね。先ほども述べた「ユーザ視点」を大事にしながら、誰のどんな課題を解決し、業務の何が改善できるのかを社内の共通認識として持ち、新事業の創出に今まで以上に前向きに取り組んでいきたいと思っています。

山中:将来的にideagramがイノベーション創出のプラットフォームになったら良いなと。多くの企業やコミュニティにおいて、新しいことを始めるきっかけとしてideagramを使ってもらいたいと思っています。特に、社会への影響力が大きい大企業により活用していただける場面を増やし、ひいては日本のイノベーションを加速するための支援になれば嬉しいです。

岡山:新規事業を生み出すのは本当に難しいと日々悩みを抱えていますが、ideagramを通じて「仕組みを活用し、プロジェクトを定着させ、イノベーションを生み出せる組織にする」というプロセスにたしかな手応えを感じています。一つでも多くの新規事業を生み出し、世の中の困りごとを解決していくために、これからもイノベーション創出の第一線で多くのお客様の支援をしていきたいですね。

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