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2020.09.07

対談【中部電力×日立ソリューションズ】
人々の生活や社会を支える新たな挑戦

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中部地方を中心に電気・ガスの供給をするほか、人々や社会に役立つサービスを多数展開している中部電力と、日立製作所、日立ソリューションズは、空間情報ソリューション「GeoMation」を活用したプロジェクトをはじめ、多くの協創に取り組んでいます。中部電力がどのような課題を持ち、どのような取り組みでデジタルトランスフォーメーション(DX)をめざしているか。さらに、日立グループとともにどのような未来を描いているかをお聞きしました。

  • 石川 民子 / Ishikawa Tamiko

    中部電力 技術開発本部 先端技術応用研究所長

    情報システム部の開発担当から販売カンパニーの事業戦略室部長などを歴任し、先端技術応用研究所長に就任。中部電力内の業務マネジメントのほか、研究や技術を通じて社会の課題解決を担う。

  • 坂東 広嗣 / Bandou Hiroshi

    中部電力 技術開発本部 先端技術応用研究所 情報通信グループ長

    お客さまに電気を供給する配電部門から、光ファイバーを用いたインターネット事業の立ち上げなどのキャリアを経て、先端技術応用研究所の情報通信グループ長に就任。IT・ICTでDXを取り入れながら技術活用を探る。

  • 難波 隆博 / Namba Takahiro

    中部電力 技術開発本部 先端技術応用研究所 情報通信グループ 主任

    お客さまに電気を供給する配電部門に従事した後、研究職へ。配電業務に関する支援技術として、MMS(モービルマッピングシステム)のほか、ドローンやIoTを活用した研究業務に携わる。

  • 栗木 良樹 / Kuriki Yoshiki

    日立製作所 中部支社 電力システム部 情報第一グループ 主任

    スマートメーターの開発のほか、ドローンの調査研究などに取り組みながら中部電力とのコラボレーションに参画。

  • 森田晋太郎 / Morita Shintaro

    日立製作所 社会システム事業部 エネルギーシステム本部エネルギーシステム第五部 技師

    デジタルソリューションやDXをめざし、新たな技術開発に携わるSE。現場に寄り添った視点から中部電力との取り組みを推進。

  • 大堀 正人 / Ohori Masato

    日立ソリューションズ ビジネスコラボレーション本部空間情報ソリューション部 デジタルソリューション推進グループ 主任技師

    3次元点群データから点検対象箇所を自動で判別する「GeoMation点検業務支援システム」の事業推進を担当。

中部電力(先端技術応用研究所)がめざすのは「コミュニティサポートインフラ」

−−先端技術応用研究所の役割やビジョンを教えてください。

石川:先端技術応用研究所は、お客さま向けに新たなビジネスやサービスを創出するための技術調査・研究・開発を行っています。事業創造本部や各関連事業会社と連携しながら、「低炭素」「お客さま起点」「デジタル化」をキーワードに、当社のめざす「コミュニティサポートインフラ」の実現に取り組んでいます。

坂東:日立ソリューションズとは、研究所が発足する以前からパートナーとして協業していたこともあり、技術面で信頼を寄せていました。将来的に技術開発の適用範囲が拡大していくことを見越して、ともに研究所で取り組んでいきましょう、という話になりましたね。

−−近年の電力業界の変化と、中部電力さまが抱えている課題をお聞かせいただけるでしょうか。

石川:近年の電力業界は「社会構造」「事業制度」「技術革新」など、さまざまな変化を迎えています。その一方で過去からずっと変わらないのが、電力を安定的に供給するという使命です。どんなに社会の変化があっても、人々の生活を支えるインフラとして、くらしに欠かせないエネルギーをきちんとお届けするという「変わらぬ使命」は社員全員の志です。

難波:昨今は、災害時でも停電にならず、万が一停電した場合でも一刻も早く復旧できる「レジリエンス」の高い電力インフラ・システムを構築することが重要視されています。新型コロナウイルスの感染予防なども最大限配慮しながら、電気をしっかりお届けするという供給責任は変わらず続けていますね。

石川:これまでは良質なエネルギーをお届けし、技術でサポートをしていくという時代でしたが、電力自由化によって業界全体で競争が激化していきました。つまり、今までと同じ方法では生き残れない、となったわけです。そこで、インフラ事業としての技術の利活用や進化によって生まれる新事業や新サービスを、会社の新しい収益の柱として立ち上げていくことになりました。

大堀:そこで着目したのが、膨大な量の設備をいかに効率よく的確に管理していくかという課題ですね。今後、作業者数が減っていくと予想される中でも電力の安定供給の体制を守るために、設備保全をしていく必要があるとお伺いしました。

坂東:そうですね。たとえば、中部電力のエリア内に電柱などの配電支持物を約280万基保有しており、施工も場所により相違するため、各現場に合わせて効率よくメンテナンスしていく方法が求められています。そこでデジタル技術を活用したDXの推進が必要となり、コラボレーションが本格化していきました。

先端ITを活用したオープンイノベーションで課題にアプローチ

−−中部電力さまは実際にどのような取り組みをされたのでしょうか。

坂東:たとえばレジリエンス強化でいうと、膨大な送配電設備を安定的かつ効率よく保守・運用するために、災害時に倒木で電柱が倒れた所にドローンを飛ばして現状を迅速に把握する仕組みを導入しました。これまで人が進入できなかったエリアのトラブルを素早く確認できるようになり、早期送電ができるようになっています。

石川:ほかにも、法人のお客さまに対してエネルギーをいかに効率よく使い、省エネや効率化につながるかというご提案もしていますね。メーカーにはできない「トータルエネルギーソリューション活動」も実施しています。

坂東:あとは個人向けにも、「ここリモ」などスマートホーム向けサービスを開始しました。お客さまのご家庭にセンサーを置き、お客さま好みの空調温度をAIが学習して自動で設定するなど、さまざまな情報を活用することも始めています。

難波:ほかにもAIによる3次元構造復元や、画像認識技術の確立も進めていますね。たとえば、異なる時期に撮影したダムの画像を用いて3次元構造復元をすることで、経年変化をチェックできます。

石川:より効率的なエネルギー利用技術を実現するために、産業向け機械の開発もしていますね。高い除菌性を持つ調湿材を世界で初めて利用した省エネ性の高い空調開発など、今までにない新たな設計や仕組みづくりも進めています。

−−日立製作所、日立ソリューションズとはどのような取り組みを行ってきたのでしょうか。

大堀:現在ご検証いただいている「GeoMation 点検業務支援システム」によって、これまで人が目視で確認していた点検作業はデジタル技術で行えることが期待できます。現場で作業されている皆さまのご意見を承りながらシステムの改善を進め、配電設備の近くに伸びてきた樹木を伐採する業務を効率的に行うために、MMS(※)で取得した大量の情報を素早く解析し、漏電の危険といった兆候を自動で取得するソリューションの実現をめざしています。

石川:このソリューションは非常に効果的と考えています。以前、台風や大雪で深刻な停電状況に見舞われた際の経験から、事前伐採することで被害は最小限に抑えられたことがあり、このようなリスクの早期発見につながるソリューション、と期待しています。

坂東:これはもともと中部電力が募集していた「COE(声)プロジェクト」というものがあり、そこにご参画いただいたのがきっかけでしたね。

大堀:そうですね。いわゆるオープンイノベーションを募るプロジェクトで「樹木の自動判別技術」という部門に日立グループとして応募いたしました。我々は、30年以上「空間情報」を活かしたシステムを、複数の電力会社に納めている実績がありますが、Society5.0の動きに着目し、2016年から3D点群を使った樹木伐採業務効率化に向けたソリューション開発を始めていました。中部電力で新しい事業の創出や新しい技術の確立をめざす貴研究所とタッグを組んで実用化に取り組んでいきたいという想いがありましたね。

※MMS:モービルマッピングシステムの略。車に3Dレーダースキャナー・カメラなどを載せ、走行するだけで自動的に3Dデータを取得できるシステム。

両社のコラボレーションで描く、今後のビジョン

−−中部電力さま側から日立製作所、日立ソリューションズへの期待をお聞かせください。

坂東:まずは事業場における技術開発ですね。現場業務の省力化につながるソリューションの提案を、今後も期待しております。あとは、点群と呼ばれる大量のデータを管理する方法ですよね。この「点」には非常に高い価値があると考えているので、ただ管理するだけでなく、適切に解析して業務に活かす方法をご提案いただけるのは、本当にありがたいと思っています。

石川:日立ソリューションズをはじめ、日立グループは、さまざまなシステムと連携できる可能性や、最新の技術を組み合わせた提案力もお持ちだと思っています。日立グループの組織力を活かし、我々の気付かない視点で、プロジェクト推進にお力添えいただけたらありがたいですね。

大堀:我々は空間情報のデータ管理には長年携わっており、この仕組みの活用は、将来的にも大きな可能性があると考えています。データは集まれば集まるほど価値を持ちますが、それだけ扱いが難しくなります。その点で、私たちの持つデータ処理の技術や「空間情報」で蓄積してきたノウハウが活用できると思っています。ビッグデータの解析を通じてニーズに合わせた最適な提案をしていき、中部電力さまの課題解決のお役に立てる存在であるとともに、持続可能な社会に貢献したいと考えています。

−−中部電力さまと日立製作所、日立ソリューションズで、今後どのような未来を描いていますか。

坂東:私たちがめざしているのは、AI、IoT技術を活用した「コミュニティサポートインフラ」の構築です。これは中部電力が持っている大量のデータを活用し、社会課題の解決に貢献していくことです。電力の安定供給という使命を果たしながら、みなさんの日常生活や社会にとって価値あるサービスを創出していきたいと思っています。

大堀:我々は、現場に行かなくとも現地の情報を確認して意志決定につなげる遠隔保全のソリューションを高度化し、電力供給という社会インフラを支えていきたいですね。

森田:同じく技術的な観点では、現場から得られるデータをいかに活用していくかが重要だと思っております。中部電力さま全体のシステムを俯瞰した上で新しい技術を吟味し、中部電力さまの持続的な発展を支えるシステム作りに貢献していくとともに、社会課題の解決に協力していきたいと考えています。

栗木:先ほど坂東さまから「コミュニティサポートインフラ」という言葉がありましたが、国内において地方創生や地方共生は重要な課題ですので、地域課題の解決のために「協創」活動を活性化していきたいですね。電力の供給を必要とされるお客さまの幸せと電力会社、現場のみなさんの幸せ、それぞれを実現していきたいです。

石川:私たちのベースにあるのは、「変わらぬ使命の完遂」です。その延長でインフラを通してみなさんのお役に立てるサービスの開発や新たな視点での貢献を考えています。何を協力することでお客さまに一番良いのだろうと考え続ける会社であることが我々の成長でもあり、日立グループとともに歩んでいければと思っています。

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