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メガFTAの入り口 第3回 メガFTAで顕在化するリスク 原産証明の取り消し、検認 メガFTAの入り口 第3回 メガFTAで顕在化するリスク 原産証明の取り消し、検認

メガFTAの入り口 第3回 メガFTAで顕在化するリスク 原産証明の取り消し、検認

株式会社ロジスティック 代表取締役
嶋 正和氏

FTAにおける日本企業が抱える潜在的リスク

企業は様々なリスクに晒されています。また、コンプライアンスの問題も昨今大きくなってきました。虚偽申請、偽装、そういった社内の隠蔽する体質が大きなブーメランとなって会社を襲い、大きなペナルティを受けて会社が倒産寸前になることも少なくありません。

FTAにおいて日本企業はそのリスクがかなり高いことを常日頃申し上げていますが、いよいよ顕在化する可能性が高くなってきました。

そのリスクとは、FTAにおいて必須の原産地証明の不備による輸出先国によるペナルティです。原産地証明をする際の証拠書類がしっかりと準備されておらず、相手国による検認(輸入先国が持つ原産地証明の検閲。輸入された後もある一定期間検認する権利を有する)によりその輸出品の原産性が否認されると、その原産判定により恩恵を得た関税の減免金額とペナルティが科されます。

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日本企業の持つ意識の低さ

FTAは原産であれば相手の国が関税を減免するとても素晴らしい制度です。しかし、関税の減免は相手国にとって税収の減少を意味し、喜ばしいことではありません。それ故正しい証明をしていない企業にはペナルティを科すわけです。

FTAのコンサルティングをしてきて12年経ちます。無料でFTAの原産地証明のプロセスを監査するサービスを行っていますが、ちゃんと原産地証明ができている日本企業は本当にわずかです。証明のルールを誤解していたり、曲解して証明していたり、証拠書類が残ってなかったり、検認に来た場合、ペナルティを免れないでしょう。

日本のFTA利用の大半はアジア諸国向けであり、それらの国から日本は信用を受けているからか、今までの検認数はごくわずか。それ故に検認に対する意識がとても低いのでしょう。

「原産地判定を得られたから安心」、「商工会議所のチェックを経たからお墨付きがある」といった企業の認識が大半ですが、その認識は大きく間違っています。商工会議所は証明の正当性を保証はしてくれません。必要最低限のチェックをしてくれただけです。検認が発生した時、企業が原産地であることの全ての説明責任を負わなければならないのです。その事実をもう少し日本企業は知っておくべきです。

経済産業省も証拠書類の「事例」を提示していますが、あくまで事例です。この通りに作れば全く問題ないとは言っていません。そのことを理解して企業はFTAを使わねばなりません。

いよいよ、日本にとって難敵の検認大国EUが日本とFTAを締結します。EUは韓国に対して年間2,800件もの検認をかけています。また、RCEPが発効されれば、中国や韓国が間違いなく検認をかけてきます。そうなった時、検認に耐えうる企業が日本にどれだけあるか。少々恐ろしくあります。この日本の原産証明の実情が分かればアジア諸国も検認を増やしてくるでしょう。例えば、タイ、インド、インドネシアなどは厳しい運用をする国です。

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検認は恐るるに足らず

検認は、きちんとした原産証明を行えば何も恐れることはありません。それは、担当者に証明を任せっぱなしではなく、企業が組織として原産地証明対応をすれば問題は起こらないということです。経営陣がFTAのメリットとリスクを分かり、そのリスクを回避するための対応策を組織的に講じれば問題ないのです。これは企業が受けたその他のコンプライアンス問題と同じ解決方法です。

まずは、経営陣にこのコンプライアンス・リスクを理解してもらいましょう。「上は(この問題を)分かってくれない」という担当者がいますが、事の本質はその担当者が経営陣に問題を正直に伝えていないこと。経営者は「担当者が(リスクのあることを)伝えてくれない」という悩みを常に持ち続けています。ですから、検認対応は経営者にコンプライアンス・リスクを伝えることから始まるのです。

日本がFTA活用での勝者になるために

以上、FTAがもたらすグローバル・サプライチェーンへの変革という企業にとっての大きなチャンスと、FTAの運用上のコンプライアンス・リスクに関して述べました。

今まで以上に企業活動にインパクトを与えるメガFTAがいよいよ日本にやってきます。皆様の企業がこの点をご理解された上で、経営者主導のFTA運用となることを切に願ってやみません。

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連載目次

第1回 日本が直面する激動するメガFTA
第2回 メガFTAでめざす先:グローバルSCMの見直し
第3回 メガFTAで顕在化するリスク:原産証明の取り消し、検認