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メガFTAの入り口 第2回 メガFTAでめざす先 グローバルSCMの見直し メガFTAの入り口 第2回 メガFTAでめざす先 グローバルSCMの見直し

メガFTAの入り口 第2回 メガFTAでめざす先 グローバルSCMの見直し

株式会社ロジスティック 代表取締役
嶋 正和氏

FTAが与えるグローバルSCMへの影響:調達

第1回の図1にあるように、FTAはほぼ売価に対して数~数十パーセントの関税を削減することができます。これは原材料の調達コストに対してはその3倍くらいのインパクトの話であり、一部の材料だけで考えると、例えば倍といったかなりの大きなコスト格差と同等です。FTAがあるかないかで調達先が変わる可能性を示唆しています。日本とのFTAに限らず、世界のFTAが自社の調達に影響を与えるのです。

最終の協定文が出ていない日EU EPAですが、これでは「拡張累積」という概念が導入されると考えられています。「拡張累積」を日EU EPAで説明しますと、日本及びEUと共通にFTAを締結している国からの部材は、そのFTAで原産性が証明できる限り、日EU EPAの原産部材として取り扱うことができます。例えば、シンガポール、メキシコ、ベトナムなどはその候補国ですし、将来の候補としては、カナダ、インドなどがその対象となります。また、EUからの離脱を協議しているイギリスも、日本=イギリス、EU=イギリスでFTAが締結され、EU=イギリスでこの拡張累積が適用されると、イギリス産自動車に日本の部材が原産材料として活用できるようになります。

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FTAが与えるグローバルSCMへの影響:販売

グローバルSCMに与える影響は、調達だけではありません。販売先に対して、生産地も大きく変わる可能性があります。

最終製品に対する関税が撤廃される、例えば日EU EPAで自動車関税が10%削減されると、EU諸国への供給元が調達コストの観点から変わることは容易に想定されます。イギリスがEUから離脱を表明したことで、日本の自動車会社はイギリスで自動車を作り続けるべきかどうかに対して懸念を示しています。EUとイギリスの間にFTAがなければ、EU諸国から自動車部品をイギリスの工場が調達すると、イギリスの税関で(ものによりますが)5%前後の関税がかかります。また、完成車をイギリスからEU諸国へ輸出する際には、先ほどの10%の関税がかかります。これだけコストが上がれば、イギリスで製造する価値があるかどうかも大きな議論となります。

実際に、韓国の現代自動車は韓国EU FTAが発効した際に、インドで製造し、EUに輸出していたオペレーションを切り替え、EU向けの生産地を変更しました。日本企業も先を見通してのオペレーション再構築を考えねばなりません。

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FTA:先を見越す力

多くの日本の企業は、日本発のFTAには関心があるようですが、海外間FTAにはあまり関心がありません。しかし、先の例のように生産がグローバル化した今、日本だけのFTAを知っているというのでは片手落ちであることは明らかでしょう。海外間FTAも活用の対象とすべきであり、グローバルSCMの設計にFTAは必ず組み込むべきなのです。

将来は分からない、その通りですが、FTAは交渉開始からある程度の年数を経て発効となります。どの国同士がFTAの交渉をしているかは、WTOのホームページでも把握が可能であり、その想定を自社の将来のFTAに組み込むことができます。当然、EUのイギリスや、TPPなどのアメリカのように発効しない可能性もあります。そういったリスクもシナリオとして鑑み、現在だけではなく、将来の影響も踏まえたサプライチェーン設計を行うことが企業の今後に大きく影響します。

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グローバル・サプライチェーン設計

グローバル・サプライチェーン設計は容易なものではありません。国内であればExcelのような表計算ソフトを使えばある程度の答えが得られるでしょうが、グローバルとなるとその変数は非常に多岐にわたり、複雑に入り組んでいます。Excelで対処しようとするとシミュレーションモデルはとてもシンプルになるだけではなく、想定するオプションも限られたものになります。例えば、想定する3つのパターンから最適解を選び出すなど、かなり人の意識が反映されたものとなり、本当に正しいのか分からなくなります。

そこで、当社(株式会社ロジスティック)では専用のグローバル・サプライチェーンのシミュレーションツールを活用することをお勧めしています。当社は株式会社日立ソリューションズとタイアップし、日立ソリューションズのシミュレーションツールを活用することで、複雑なグローバル・サプライチェーンの最適解を見いだす支援を行っています。

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シミュレーション事例図


以前にあった事例ですが、とあるグローバル企業が東南アジアで作った商品の中南米への輸出を開始しました。当然、その商品を補修するためのアフターパーツの供給体制構築が、顧客満足に影響するアフター・サービス上、大切になります。彼らが想定した回答は、メキシコかパナマにパーツのハブを置くことでした。また、もう一つのオプションとしてアメリカのオペレーションが充実しているので、アメリカもハブになるという考え方も捨てていませんでした。そこで、当社がグローバル・サプライチェーンのシミュレーションを行うと思いがけない結果となりました。将来の商品の販売量と想定されるアフターパーツの需要を考えると、ハブなど設けずに東南アジアのパーツ生産地から各国へのコンテナ直送が成立するというものでした。そのコンテナ直送の成立には数年の時間が必要ですが、ハブを作った1~2年後にハブを撤廃して直送にするというアイディアも意味がありません。結果として、直行が成立するまで現行体制で運用し、直行の成立する国から直行での供給に切り替える判断となりました。


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連載目次

第1回 日本が直面する激動するメガFTA
第2回 メガFTAでめざす先:グローバルSCMの見直し
第3回 メガFTAで顕在化するリスク:原産証明の取り消し、検認